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吹抜けのある住宅は、開放感や採光性の高さから人気の間取りの一つです。しかし同時に、「構造的に弱くなるのでは?」「耐震等級3は諦めるべき?」といった不安の声も多く聞かれます。
確かに、壁や床が少なくなることで建物の剛性や耐力が低下するリスクはあります。ですが、それは“設計次第”で解決できる問題です。適切な構造設計と補強計画を行えば、吹抜けがあっても耐震等級3の取得は十分に可能です。
本記事では、耐震等級3の取得を前提にした吹抜け住宅の設計ポイントを、構造実務の視点からわかりやすく解説します。「あきらめずに実現するために、どんな工夫が必要か?」その具体策を順に見ていきましょう。
吹抜け住宅でも耐震等級3を実現できる理由

吹抜けは開放感のある魅力的な空間ですが、「構造が弱くなるのでは」と不安視されることも少なくありません。このセクションでは、耐震等級3という最高レベルの耐震性能が、吹抜け住宅でも十分に実現可能である理由を、基本的な構造設計の考え方から解説します。
耐震等級3とはどんな基準か
耐震等級3は、「住宅性能表示制度」における耐震性の最高ランクです。建築基準法で定める耐震強度の1.5倍の地震力にも耐えうる水準であり、消防署や警察署など災害時に活動拠点となる建物と同等の耐震性が求められます。
この等級は、震度6強〜7程度の大地震が発生しても倒壊・崩壊しない構造性能を保証するもので、家族の命と資産を守るための最も信頼できる指標といえます。
なぜ「吹抜け=弱い」と思われがちなのか
吹抜けを設けると、上下階を貫く大きな空間が生まれます。次のような構造的リスクが生じやすくなります。
- 耐力壁の量が減り、耐震性能が低下する
- 床面が分断され、水平剛性が不足する
- 空間が広がることで構造バランスが崩れやすい
これらの要因から、「吹抜け=構造的に弱い」と誤解されやすいのです。実際に構造を考慮せずに計画を進めれば、耐震性が不足する恐れもあります。
それでも実現できる理由:構造計算と設計の工夫
現在では、構造設計の技術進化により、吹抜け空間があっても耐震等級3を実現するノウハウが確立されています。具体的には以下のような手法が用いられます。
- 減少した壁量を別の部位で補う耐力壁の配置工夫
- 吹抜けによって失われた床の剛性を補強する構造用合板や火打ち梁
- 柱と梁の接合部を強化するための専用金物や補強パーツの活用
これらの設計上の配慮を計画段階から取り入れることで、吹抜けがある家でも「最高レベルの耐震性」を実現できます。
吹抜けだからといって、あきらめる必要はありません。大切なのは、“構造を知った上で設計する”ことなのです。
吹抜け×耐震等級3の間取りアイデア
耐震等級3を前提に、開放感のある吹抜けリビングと暮らしやすさを両立できる間取りを考えてみました。
おしゃれな吹抜けと、最高等級の耐震性能。その両方をあきらめない家づくりのヒントになればうれしいです。
開放感も安心も両立する、30坪のスマートプラン

延床約30坪の2階建てで、1階はLDKと水回りを集約し、生活動線をコンパクトに。2階には個室3部屋とバルコニーを配置しています。LDKの上部を大きく吹き抜けにすることで、コンパクトながらも開放的な空間に仕上がっています。
耐震性を意識しながらも、日々の生活がしやすく、気持ちよく過ごせる住まいをイメージしました。
日常動線の中に、しっかりと耐震性を確保
このプランでは、吹抜けの位置と大きさを工夫して、耐力壁の配置バランスがとりやすくなるように設計しています。玄関まわりや収納、階段周辺の壁を活かして、構造的な安定感を確保しました。
また、2階の洋室を吹抜けの両側に配置することで、床の連続性を保ちつつ、開放感と構造の強さを両立しています。家の中心に耐力壁を集中させないよう、バランスよく配置することもポイントのひとつです。
水回りはLDKの隣にまとめ、動線もスムーズに。特に、洗面と脱衣を分けることで、家族が同時に使いやすいレイアウトにしています。
家族の気配を感じながら、自然とつながる暮らし
明るい吹抜けのあるリビングで、自然光を感じながらゆったり過ごす時間。2階にいても、リビングの声や気配が届くことで、家族のつながりを自然と感じられる。そんな暮らしをイメージしています。
家事動線や収納も整っているので、毎日の家事や育児がスムーズに。「安心して住める家」であることは大前提として、日々の快適さにもこだわりたくて、細部まで考えながら作ってみました。
設計の工夫①:耐力壁の配置とバランス

吹抜けを設けることで減ってしまう壁量は、構造的な工夫によって十分に補うことができます。ここでは、耐震性を確保するために必要な耐力壁の配置バランスや、間仕切壁を構造に活用するテクニックを紹介します。
吹抜けによって減る壁をどう補うか
吹抜けを設けると、上下階の壁が一部消失するため、建物全体の壁量が不足しやすくなります。これが耐震等級3取得の障壁とされる大きな理由の一つです。
しかし、減った壁量は他の場所で計画的に補うことで対応可能です。玄関や階段周辺、収納スペースの壁などを耐力壁として活用することで、必要な壁量を確保できます。
単に壁量を増やすだけでなく、建物全体のバランスに配慮した配置が重要です。片側に壁が偏ると、地震時にねじれ(ねじれモーメント)が発生し、構造的な不安定さを生むため注意が必要です。
間仕切壁も“構造”にできる
居室を仕切る間仕切壁も、設計次第で耐力壁として機能させることができます。構造用合板や筋交いを用いることで、通常の間仕切壁を耐震性能を担う壁に変えることが可能です。
これは、吹抜けによって主たる壁が不足した場合の“代替策”として非常に有効です。特に1階にLDKを配置しつつ吹抜けを設けたい場合などは、隣接する収納や水回りの間仕切壁を活用することで、構造とデザインを両立できます。
- 収納・階段まわりの壁を活用する。
- 水回りスペースの間仕切壁を強化する。
- 吹抜け周辺の耐力壁を確実に設ける。
- 耐力壁は左右・前後にバランス配置する。
- 間仕切壁に構造用合板を併用する。
このように、壁が“ないから弱い”という発想ではなく、「どこに・どう配置するか」が設計の勝負どころとなります。構造と間取りのバランスを早期に計画し、意図的に強い構造をつくる視点が求められます。
設計の工夫②:床の「つながり」で家の強さを保つ

吹抜けによって中断される床面は、家の水平剛性に大きな影響を与えます。このセクションでは、剛床構造や火打梁、構造用合板の活用によって、床の「つながり」を保ち、建物全体の強さを維持する方法を解説します。
剛床構造で“空中の床”を支える
吹抜けを設けると、本来あったはずの床が消失し、建物の“面としての強さ”が弱くなります。地震時に構造が変形しやすくなるため、水平構面の補強が不可欠です。
そこで有効なのが、構造用合板や火打梁(ひうちばり)などを使って床面を一体化させる剛床構造です。床の「つながり」を保ち、上下階のねじれやたわみを防ぐことができます。
特に、吹抜けによって床の“連続性”が分断される場合でも、周囲の床構造を高い剛性で補うことで、安全性を確保できます。
- 構造用合板を梁上に施工する。
- 火打梁で床面の変形を防止する。
- 床倍率を確保して水平構面を強化する。
- 吹抜け周囲の梁成を厚めに設計する。
- 梁間に補強材を挿入して一体化する。
床のゆがみを防ぐ仕組み
水平構面が弱いと、地震時に床が“よじれる”ように変形し、壁や柱に過度な負荷がかかります。これを防ぐためには、床全体が一つの強い「面」として機能することが重要です。
具体的には、床の角に設けた火打梁が対角方向の変形を防ぎ、構造用合板が面全体の剛性を高めます。地震の力を分散させ、柱や壁だけに負荷が集中しない設計が可能になります。
吹抜けによる床の分断は、デザイン上の魅力である一方で、構造的にはリスクです。しかし、正しく補強すれば「見えない床の強さ」で家全体の安定性を確保できます。
設計の工夫③:梁や接合部の強さを確保

柱と梁の接合部は、住宅の耐震性能を左右する重要なポイントです。このセクションでは、金物や梁サイズの調整によって、目に見えない部分の強度を高める設計手法を具体的に説明します。
柱と梁の接合部を強化する金物
吹抜けを設けた住宅では、床が抜けた部分に直接加わる地震力を、柱や梁が受け止める必要があります。とくに、柱と梁の“つなぎ目”である接合部の強度確保が重要なポイントです。
そのため、現代の木造住宅では、接合部専用の耐震金物が不可欠となっています。柱脚・柱頭金物、羽子板ボルト、プレート金物などを適切に選定・配置することで、構造全体の一体性が高まります。
目に見えない部分だからこそ、正確な設計と施工管理が求められます。特に耐震等級3を目指す場合、構造計算に基づいた金物選定が大前提です。
- 柱脚金物で柱の引抜き力に対応。
- 羽子板ボルトで梁と柱を強固に接合。
- 接合部にプレート金物を挿入する。
- 梁せいに応じた補強金物を選定。
- 耐力壁と梁の接合部にも金物を配置。
梁のサイズ調整で強度とデザインを両立
吹抜け空間は天井が高く、構造的には梁が「空間に露出」しやすい特徴があります。そのため、構造強度を満たしつつ、デザイン的にも違和感のない梁設計が求められます。
ここで有効なのが、梁せい(梁の高さ)の調整による強度確保です。吹抜けを横断する梁に厚みを持たせることで、たわみや変形を抑えられます。
化粧梁(見せ梁)として意匠に組み込むことで、構造材をそのままデザイン要素に変える工夫も有効です。強度と美しさの両立が可能になります。
構造は「隠す」ものから「活かす」ものへ。その発想が、吹抜け空間を安全で魅力的なものにしてくれます。
吹抜けの位置とサイズで家の強さが変わる

吹抜けの「どこに」「どれくらいの大きさで」設けるかによって、家の構造的な安定性は大きく左右されます。このセクションでは、位置や広さごとの注意点と、それに応じた設計上の工夫について解説します。
中央に吹抜けをつくる場合の注意点
家の中央に吹抜けを設けると、建物全体の構造バランスに大きな影響を与えます。なぜなら、中心部は本来もっとも構造的に安定させたい部分であり、そこに空間を抜くことで耐力壁や床構面の連続性が失われやすくなるためです。
このような場合は、周囲に配置する耐力壁の量とバランスを慎重に設計し、接合部や梁の補強も計画的に行う必要があります。特に、壁がL字やコの字状になる場合は、偏心(へんしん)によるねじれにも配慮することが重要です。
- 吹抜けの四辺に耐力壁を配置する。
- 片側にだけ壁が集中しないよう注意する。
- 構造用合板で水平剛性を補う。
- 梁や火打材で床の一体性を確保する。
- 偏心が生じないよう左右のバランスを調整。
端や片側に配置する場合は安定しやすい
吹抜けを家の端や一方向に寄せて配置することで、耐力壁や床構面の連続性を保ちやすくなり、構造的な安定性が向上します。特に、壁量の確保や耐力壁のバランス設計が行いやすいため、設計自由度が高まるのもメリットです。
建物全体としての剛性バランスもとりやすく、耐震等級3を目指す際の構造計算上でも有利になる傾向があります。
一方で、デザイン上の視線の抜け方や採光計画には工夫が必要になるため、意匠設計とのバランスも大切です。
吹抜けが広すぎる場合の工夫
吹抜けの面積が大きくなると、床の連続性がより損なわれ、水平構面の剛性低下や壁量不足のリスクが増します。こうした場合には、構造的な補強を“段階的”に取り入れることがポイントです。
床面積の一部だけ吹抜けとし、視覚的な開放感を保ちつつ、残りの部分で剛性を確保する設計も可能です。補助的な梁を挿入したり、吹抜けに面する壁を耐力壁に強化することで、強度を担保できます。
広さを“ただの空間”として設計せず、“構造の一部”として捉えることが重要です。吹抜けは構造と意匠を両立させる場面であり、そのための設計判断が家全体の安全性を左右します。
実現するための計画の進め方

安全で美しい吹抜け住宅を建てるためには、構造を意識した計画と、適切なパートナー選びが欠かせません。このセクションでは、計画初期から構造の視点を取り入れる方法と、信頼できる建築士や工務店の選び方を紹介します。
構造のことも最初に相談するのが成功のコツ
「間取りを決めてから構造を考える」ではなく、最初の計画段階から構造設計の視点を取り入れることが、成功する家づくりの鍵です。
特に吹抜けは、建物全体の剛性や耐力壁の配置に大きく関わる要素です。間取りがある程度固まってから構造補強を後付けしようとすると、意匠とのバランスが崩れたり、余計なコストが発生することもあります。
そのため、設計初期から「構造と意匠を並行して検討する」体制づくりが理想的です。希望の吹抜け空間を無理なく実現しながら、耐震等級3の性能も両立できます。
- 要望を伝える段階で吹抜けの希望を共有する。
- 最初から構造設計者が打ち合わせに加わる。
- 仮プラン段階で構造の検討を始める。
- 吹抜けサイズと配置の意図を明確にする。
- 耐震等級3を目標に設計を進めると伝える。
吹抜けを活かす家づくりのパートナー選び
どんなに理想的なプランを思い描いても、それを現実の家として実現できるかどうかは、「設計者と施工者の力量」にかかっています。
吹抜けと耐震性能の両立には、高度な設計ノウハウと現場対応力が不可欠です。したがって、過去に吹抜け住宅で耐震等級3を取得した実績がある建築士や工務店を選ぶことが非常に重要です。
初回相談の段階で、以下のような視点をもってパートナー選びを進めるとよいでしょう。
- 吹抜けに関する構造上のリスクを丁寧に説明してくれる
- 「できる・できない」の判断根拠を明確に示してくれる
- 意匠と構造のバランスをとる工夫を提案してくれる
- 耐震等級3に関する認定取得の実績が豊富である
- 構造設計者と連携した体制を確立している
家づくりは、信頼できるパートナー選びから始まります。理想と安心を両立するために、設計力と構造理解のある専門家と出会うことが、成功への第一歩です。
吹抜け×耐震等級3を叶える、強くて美しい家づくり

吹抜けのある住宅は、その開放感とデザイン性から多くの人に選ばれています。しかし一方で、「耐震性が落ちるのでは」と不安に感じる声も少なくありません。
結論として、吹抜けがあっても「耐震等級3」は十分に実現できます。重要なのは、間取りや意匠だけでなく、構造面に配慮した設計を行うことです。
そのためには、設計初期段階から構造について専門家と話し合うことが不可欠です。構造とデザインのバランスを意識し、補強計画や耐力壁の配置、床の連続性を丁寧に考慮すれば、安心して暮らせる家づくりが可能です。
吹抜けをあきらめる必要はありません。安全性と美しさを兼ね備えた理想の住まいは、正しい知識と信頼できるパートナーによって実現できます。家族が安心して長く暮らせる家を目指し、ぜひ積極的に計画を進めていきましょう。